発表者が関わる活動は、行政や企業に働きかけるトップダウン型のものと、市民の意識変革を促すボトムアップ型のものがあり、両者が相互に作用することで社会において動物倫理が実現されると考えている。しかし、いくつかの理由で、その相互作用がうまくいっていない。
本発表を通じて、皆さんとともに産業動物のための活動をより良いものにする方法を考えたい。
発表者が行っている活動の中で、トップダウン型のものは、 ・アニマルウェルフェア(以下、AW)畜産補助金に関するロビー活動
一方、ボトムアップ型のものは、 ・AWを伝える街頭活動 ・ AW新聞の発行
それぞれの活動で一定の成果が得られている一方で、いくつかの課題も明るみになっている。本発表では、3つの活動の内容・成果・課題を共有し、今後の改善や発展のための方策を、参加者の皆さんと共に考える場としたい。 (なお、活動の多くは認定NPO法人アニマルライツセンター内で行っているが、発表における意見は団体としてではなく個人としての見解である。)
主な課題 ① 活動家の多忙さ 仕事や家庭などの事情により、活動に割ける時間が限られている人が多い。そのため、活動で得た経験の共有が難しく、改善案が出ても実行に移すための人手が不足している。 ② 活動方法の偏り 産業動物を守る活動家は多くない中で、さらに活動がボトムアップに偏っているように思われる。 ③ 親しみにくさ・大衆への訴求力の弱さ 動物に関する啓発活動では、「動物の活動は怖い」「自分たちには関係ない」「(食生活等)自分の生活に支障が出るのは困る」といった反応を受けることが多く、一般の人々を巻き込む力が十分ではない。 ④ 行政を説得するための公益性の不足 ロビー活動では、動物福祉の倫理的側面だけでなく、人間社会にとっての公益性も求められる。しかし、日本社会には、動物福祉を推進することが行政や市民にとって利益になるという認識がまだ十分に根付いていない。
解決策の方向性 ・街頭活動や新聞などの啓発活動では、「親しみやすさ」や「楽しさ」を打ち出し、活動の間口を広げて賛同者や協力者を増やす。 その際、「残酷さを和らげつつも、伝えるべき事実は正確に伝える」というバランスを重視する。 ・研究者と活動家が連携し、ロビー活動を後押しする科学的・社会的データを収集・活用する。 これらの方針に基づき、課題解決のうちのひとつの方法として、新聞部では「優しく動物の問題を伝える」紙面を制作した。その結果、多くの施設に設置が認められ、特に畜産学科を含む農業系高校においては、生徒への配布や授業での利用にもつながった。
マンパワーが限られている中、どうすれば効率的に社会において動物の地位を向上させられるか、研究者・活動家たちと意見を分かち合いたい。